溺愛オフィス
どこからか聞こえる桜庭さんの声が、私に色々と質問する。
なぜそんなことを聞かれているのかはわからないけど、私はうまく回らない頭で必死に考えながら答えた。
アパートの外観とか、部屋番号とか……
鍵は鞄の中です、とか。
それから……体がふわふわと浮いて。
私の体が、良く知ってる心地よい場所に横たわる感覚。
このままぐっすりと夢の中に入りたい。
そんな蕩けるような誘惑に身を任せようとした時。
「蓮井、聞こえてるか?」
頬に、冷たく硬い感触がして。
少し重く感じる瞼をゆっくりと開くと、最初に見えたのは見慣れた天井とシーリングライト。
……自分の部屋だ。
ぼんやりとそう認識してから、頬に当たる冷たさの正体を確かめる為に、私は視線を右へと動かせば。
頬に当たる何かよりも先に、私の視界に入った姿。
「……桜庭さん?」