溺愛オフィス


ギッと、ベッドが音をたて揺れて。

ふわりと……私の体が温かい何かに包まれた。

鼻をくすぐる香りは、甘く穏やか。


「お前は考え過ぎなんだよ」


囁くような声が耳をくすぐれば、自分が今、桜庭さんの腕の中にいることに気付く。

途端、胸が騒ぎ出して、私は身体を強張らせた。

それが、桜庭さんにも伝わったのか……


「大丈夫。ちゃんと届いてる。でも、それでも上手くいかない時もある」


彼は、私の背中を優しく撫でながらあやすように話す。


「約束しただろ。砕けたら、飲みに付き合ってやるって」


耳からだけじゃない。

身体からも、桜庭さんの声が響いて伝わって。


トクン、トクン。


桜庭さんの体温と鼓動が、少しずつ、少しずつ……


「だから、辛気臭いこと考えてないで、もう休め」


私の不安と緊張をほぐしていった。

涙ももう止まっている。


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