溺愛オフィス
「桜庭さんって……冷たいのか優しいのかわからない」
そっけない言葉が投げかけられたかと思えば、こんな風に優しくしてくれたりして。
「優しいだろ」
ちょっとだけ笑みを含んだ声に、私は頬を緩めた。
「どっちも、桜庭さんなんですよね」
そう、だ。
クールでたまに意地悪で、だけど優しい。
それが、桜庭さんという人。
私は、そんな桜庭さんを……
「ね……桜庭さん。私、たくさんぶつかって、いつか変われたら、桜庭さんに……」
ああ……すごく、眠い。
身体から力が抜けていく。
なんだかふわふわして、溶けそうな気分のまま、心に浮かんでいたことを口にしようと唇を動かした。
最後まで声になっていたかはわからないけど……
桜庭さんが小さく笑ったような気配がしたのを最後に
私の意識は眠りの底に落ちた。