溺愛オフィス
壮介君は暫く無言だったけど、やがて。
「あれもこれもって、柊奈さんって結構欲張りだね」
そう言って、壮介君はちょっとだけ笑みを作る。
そして「そっか。自分の為、か」と呟いたかと思えば。
「だったら、俺も柊奈さんと自分の為に頑張んなきゃだな」
彼はハッキリとした声で告げてから、歩みを止めた。
何故立ち止まったのかわからないまま、私も壮介君に合わせて立ち止まると──
「ひとつ、思いついたことがあるんだ。多分、賭けにはなるけど」
壮介君の言葉に、私の心が期待で満ちていく。
「な、なに? どんなこと?」
賭けでもなんでもいい。
どんなことか教えて欲しくて、壮介君に視線を送る。
けれど壮介君はニッと笑って。
「桜庭さん、まだ会社にいたよな?」
そんなことを聞いた。
私が「いたけど……」と思い出しながら答えると。
「よし。とりあえず、会社戻ろう」
壮介君は踵を返し、足早に会社へと歩き出して。
夕焼けの赤さが僅かに残る空の下
私も慌てて、彼の背中を追ったのだった──‥