溺愛オフィス
桜庭さんは隣の椅子に座ると、コーヒーに口をつける。
彼の質問に私は首を縦に振って、唇を動かした。
「……本当に私で大丈夫ですか? 私より美咲の方が華もあるし、適任な気がするんですけど……」
そう言うと、桜庭さんは、まだそんなこと言ってるのかというような呆れた顔をする。
「岡沢じゃブランドイメージには合わないだろ」
"CaN Do"の挑戦というテーマからイメージしているのは、ハーフのような顔。
確かに、美咲のような可愛いを強調したような顔立ちとは違うけれど……
自分の顔がハーフ顔かと言われれば、そんなこともなく。
ただ、桜庭さんと壮介君曰く、ハーフ顔を作りやすい顔なんだとか。
最初はそんなはずないと思っていたけど、ヘアメイクさんも美咲に写真を見せられて難しくないと発言していたらしい。
プロが見て言うなら……と思うものの、やはり不安は払拭しきれないわけで。
私が、未だ煮え切らない態度でいれば。
桜庭さんの瞳に、射すくめるように見つめられて。
「大丈夫。お前1人で挑戦するわけじゃない」
「……あ……」