溺愛オフィス
──そうだ。
つい、モデルというプレッシャーに自分のことばかり考えてしまってたけど……
この撮影には、みんなが一緒になって挑んでるんだ。
それぞれがそれぞれの責任を持って、ひとつのものを作り上げる。
窓越しに部屋の中の様子を伺うと、美咲と壮介君は衣装を見ながら真剣な顔で話をしていた。
そこにヘアメイクさんがやってきて、ヘアスタイルについて身振り手振りで相談を始めて。
部屋の奥の方では、カメラマンさんが機材を入念にチェックしている。
みんな、自分の役割と向き合ってるんだ。
「……桜庭さん、私も頑張ります」
こうやってたくさんのことを経験していくことが、自分の力になって、自信へと繋がるんだと気付いたから。
私がすべきことを、全力で頑張る。
心に誓って、背筋を正せば、桜庭さんは目を細めて頷いてくれた。