溺愛オフィス
【特別な人、です】
撮影は、最初こそ戸惑ったものの、カメラマンさんの指示に従い、なんとか無事に終えることができた。
写真はその場で現像され、何十枚もの中から数枚をピックアップ。
片付けを終えると、私たちは解散した。
そして、月曜日──
桜庭さんが、急ぎで作った企画書と写真の入った封筒を手に社長室に入室するのを、私と壮介君は固唾を飲んで見ていた。
「柊奈さん。社長、どんな反応するかな」
声を潜めて話しかけてくる壮介君に、私も合わせて喋る、
「即却下、とかだったらどうしよう……」
「や、結構いい線行ってるし、それはないでしょ」
「だといいんだけど……」
ヘアメイクとカメラマンの腕は確かだし、みんなでじっくりと選んだ写真も、かなりブランドイメージを意識させるようなものだ。
それから、これは桜庭さんの案で、先入観が邪魔しないよう、モデルの正体が私だということは明かさずに見せるらしい。
まあ……あれを見せて、蓮井ですと言われても半数以上の人が信じないだろうけど。
私自身、何度写真を見ても自分じゃない気がしてるくらいだし。
というか、最大の問題は、もし社長が興味を示してくれたとして、無名のモデルを使うことをどう思うか。
壮介君もそこは懸念しているらしく、それを含めての賭けだと言っていた。
何はともあれ、今は目の前の仕事をこなして待とうということになり、私は結果を気にしつつも、雑誌社との打ち合わせに出たのだった。