溺愛オフィス


私は桜庭さんの向かいに座る壮介君の隣に腰を下ろす。

そのタイミングで……


「蓮井、結果が出た」


そう口にした桜庭さん。

表情は、どことなく明るい感じ。

もしかして、と、心が勝手に期待を始めて。

壮介君も同じなのか待ちきれない様子で、デスクに身を乗り出すように「どうでした?」と促すと……


「蓮井を新ブランド"CaN Do"のモデルとして起用することが決定した」


桜庭さんは微笑みながら、ハッキリとした声で言った。

壮介君が「よっしゃ!」とガッツポーズを作る横で、私はデスクに力の抜けた身体を預ける。

突っ伏した体勢で「よかったぁ」と零すと、二人が小さく笑う気配がした。


自分がモデルをやることに対しての不安がないといったら嘘になるけど、とりあえずは最初に賭けには勝ったのだ。

みんなで作ったものがいい結果となって残る。

それが凄く嬉しい。


二人の笑みに私も笑みを零して起き上がると、桜庭さんは社長室でのことを話してくれた。


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