溺愛オフィス
桜庭さんは予定通り、モデルについて何も言わずに企画書と写真を見せたらしい。
社長はまず、写真を見た瞬間『この子はどこの事務所のなんて子だ』と食らいついたんだとか。
予想以上の好感触に『フリーのモデルだ』と答えた桜庭さんは、その時点で社長に確認した。
KAORIではなく、このモデルではどうかと。
無名ではあるが、KAORIにもひけをとらないと押して。
それを聞いた社長は、少しの沈黙のあと……
『合格だ』
笑みと共に、新ブランドのモデルとして使うことにゴーサインを出した。
その直後、桜庭さんがモデルの正体が私であることを明かしたら……
「社長、驚いたあとに爆笑してたよ」
桜庭さんはその時の光景を思い出してるのか、小さく笑う。
「女って怖いな、だと」
た、確かに私だと思えない変身ぶりだものね。
でも、本当に恐ろしいのは女ではなく、変身させる方の技術だと思う。
とにもかくにも、社長としてはイメージにぴったりだから、正体が私でも問題はないと言ったそうだ。
何より、提出した企画書にある企画が気に入った、と。
その企画とは。