溺愛オフィス
【モデルの正体を、マスコミには一切明かさない】
──というもの。
これは、桜庭さんの案。
社長の性格的に、こういった悪戯のようなものを好む傾向があるからというのと、私の今後のことを考慮してくれたものだ。
この件に、目立つのが得意じゃない私は深く感謝している。
桜庭さんは組んでいた足をほどくと、背筋を正して。
「本番はここからだ。さっそく撮影のリスケジュールに入る」
そう告げると、ホワイトボードの前に立ち、黒いマーカーを手にしたのだった。