溺愛オフィス


ほとんどのスタッフが地下にいるのか、1階には人の気配がない。

少し座って、テラスの景色でも眺めていようかと思った時だった。


広々とした明るい玄関の扉が開いて。


「……誰かと思った」


太陽の光を背に受けながら、桜庭さんが入ってきた。


「一度見てるじゃないですか」

「見てても、一瞬考えるんだよ」


桜庭さんはクスッと笑って、スタジオに入ってきた時から右手に持っていた携帯電話を私に見せる。


「KAORIから連絡があった」

「もしかして、モデルの件で何か?」


今になって進展があったのかと瞬きをして桜庭さんの言葉を待っていると。


「まだ困ってるのかと聞かれたから、お前よりいいモデルが見つかったって言っておいたぞ」


え、ちょっ、待ってください桜庭さん!


「そんな大きな事を言ったんですか!?」

「事実だろ?」


当然のように言ってのける桜庭さんに、私はちょっと慌ててしまう。


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