溺愛オフィス
「ヘアメイクの技術は素晴らしいですけど、モデルの中身は私ですよ?」
すると、私の言葉のせいなのか態度のせいなのか。
桜庭さんは私を観察するように見つめた後……
「また、不安になってるのか」
私の心を見透かした。
隠しておこうとは思っていなかったけれど、こうもすぐにバレてしまうなんて。
私がわかりやすいのか、桜庭さんが鋭いのか。
どっちなのかはわからないけど、私は素直に言葉を吐き出す。
「なりますよ。だって、あのKAORIさんの代わりですし……」
きっと誰だって、この状況に不安になり戸惑うだろう。
そんな風に考えていたら。
「代わりじゃない」
静かだけど、しっかりととした桜庭さんの声が耳に届いた。
「リアライズは、お前を選んだんだ。俺は、お前だから社長に掛け合ったんだよ」
喋りながら、着用している衣装のビスチェの白いリボンを結びなおしてくれる。