溺愛オフィス
「大丈夫。お前はあの女にはないものを持ってる」
励まされ、心に温かさを感じて。
けれど、KAORIさんにないもので私にあるものがなんなのかがわからず、眉間に皺を寄せてしまう。
そうすれば、桜庭さんはフッと口元を緩めて。
「せっかく着飾ってるのに、不安が顔に出て悲惨だぞ」
女性に向けるのは若干失礼な言葉を口にした。
「悲惨って!」
「その顔もなかなか悲惨だな」
頬を膨らませた私に、またもや攻撃してくる。
「桜庭さんっ!」
これから撮影しないとならないのに、悲惨だなんてモチベーションを下げるには結構な言葉だ。
でも……わざとなんだって、本当はちゃんとわかってる。
だって、ほら。
「まあ、悲惨でもいいよ」
意地悪なことを言いながらも、瞳の奥には優しい色が滲んでいて。
「ブランドとか仕事とか意識せず、生まれ変わったつもりで、蓮井らしく楽しめ」
その気遣いが、私の心をほぐし、肩の力を少しずつ抜いてくれるんだ。