溺愛オフィス
【一難去って……です】
ブランドのイメージを壊さず。
自分らしさを失わず。
「柊奈ちゃん、視線もう少し右に。そう、いいよ」
光をあてられて、みんなの視線が自分に集中すれば、どうしたって緊張はしてしまったけれど。
「その表情! いいの撮れてるよ」
カメラマンさんのノリのいい指示や合間に入る会話のおかげもあり、シャッターを何度も切られていくうちに、撮られることに慣れてきて。
途中、バックスクリーンを変え、メイクを直される頃には、自然と笑えるようにもなっていた。
そうして、休憩を挟みつつ何度か衣装をチェンジ。
私の表情に余裕が生まれてきたからか、最初はどこか不安げな空気が漂っていたスタジオ内も、いつの間にか和やかな雰囲気に変わっていった。
そんな中、ついに──
「オールアップ!」
撮影が、終わった。
みんなの拍手がスタジオ内に響くと、壮介君が笑顔を浮かべながら私に歩み寄って。
「お疲れ。頑張ったじゃん、柊奈さん」
彼にしては珍しい、労いの言葉をくれる。