溺愛オフィス
"待ってる"
その言葉を以前も聞いた気がして、けれどいつだったか思い出せずにいると。
「蓮井ちゃん、衣装回収するから着替えよろしく」
深水さんに声をかけられた。
「あ、はーい」
振り返り返事をして、桜庭さんに向き直ると、彼の携帯が着信を告げる。
「社長だ」
桜庭さんはそれだけ言うと、私との会話を切り上げるように軽く手を上げ合図し、携帯電話を耳に当てた。
桜庭さんが待っている言葉の続き。
凄く気になるけど、今はやるべきことを済ませないとならないし今度にしよう。
私は桜庭さんに軽く会釈をして、着替える為に2階のメイクスペースへと向かったのだった。