溺愛オフィス
「糖尿病?」
『そうなのよ。実は、結構前から患ってたみたいでね』
「そうなんだ……」
父とは連絡をとっていなかったし、知らないのは当然なんだけど……
病気のことすら知らない娘なんて、親不孝なのかもしれないと、心の奥が痛むのを感じた。
『それでね、お医者さんが、視力が失われ始めてるんだって言ってて』
──え?
「目が、見えなくなるってこと?」
『今すぐじゃないらしいのよ。でもね、いずれは見えなくなるみたいだから、その前に一度顔を見せてやってくれない?』
きっと、喜ぶから。
そう言われたけど、父が喜ぶ姿なんて私は一度も見たことがない。
小さい頃から、一度も。
だけど……
「前と同じ病院?」
ぶつかってみなくちゃ、何も始まらない。
進めない。
「わかった。お見舞いに行くね」
だから、父に会いに行こう。
臆病な私から
卒業する為に。