溺愛オフィス


正確には、何かにぶつかった衝撃はあったけど、意外にも痛さはあまりなくて。

一体何がどうなったのかときつく閉じていた瞼を開くと。


「い、つつ……」


眼前に


「……蓮井……怪我は?」


桜庭さんの整った顔があって。


「……え?」

「え、じゃない。怪我はないかって聞いてるんだ」


話しながら彼は、黒髪でも重く見えないツーブロックとアップバングのショートヘアを、手で撫でている。

頭、打っちゃったのかな? とか。

それでも束感が崩れずオシャレなままなのは、ハードワックスのおかげかな、なんてのんきに考えてられたのは、この瞬間まで。

斜めに流されている前髪の下にある瞳が、私を真っ直ぐに見つめ…


「どうした?」


そう問いかけられた刹那、理解する。


私は桜庭さんに助けられ



彼の上に乗っかるような状態で抱き締められているということに。


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