溺愛オフィス
高く柔らかい車のクラクションが二回、短く聞こえたかと思ったら、白い車が私の横に停まった。
そして、助手席のウィンドウが下がると。
「蓮井!」
私の名字が呼ばれた。
その声は、もしかしなくても私のよく知る声で。
足を止めて近寄り、腰を折って運転席の人物を見る。
そこにはやはり──
「桜庭さん!」
彼がいた。
休日にも会えるなんて、嬉しい偶然。
桜庭さんは私の手にする荷物を見ると、小さく笑う。
「凄い量だな」
「買い過ぎちゃって」
「一人か?」
尋ねられ、私は「はい」と答えながら首を縦に振った。
すると「この後の予定は?」と聞かれて。
特になかったので私は帰るだけだと返す。
そうすれば。
「よし、行くか」
桜庭さんはそう言うと、手で車に乗れと合図する。