溺愛オフィス


そこに、店員さんがコースの夏野菜のサラダを運んできて。

テーブルの上に並べられると、私はサラダに手をつける前に、唇を動かした。

そして、桜庭さんに、父が私の写真を見ていたことを話す。

看護師さんから聞いたこと。

父が居心地悪そうに背を向けたこと。

それから……前より、父の存在を恐ろしいと思わなくなったということも。


「父の口から父の想いを聞いたわけでもないんですけど、今の私にはそれだけで十分なんです」


あとは、少しずつ進めたらいい。

そう告げると、桜庭さんは目を細めて。


「プロジェクトをスタートさせた頃より、いい表情になったな」


優しげな雰囲気を纏いながら、嬉しい言葉をくれた。


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