溺愛オフィス


それから私たちはディナーに舌鼓をうちながら、他愛ない会話を楽しんで。

最後にデザートのジェラートがテーブルに置かれる。

透明の涼しげなお皿に乗ったジェラートを食べようと、スプーンを手にしたと同時。

食後のコーヒーを飲んでいた桜庭さんが、私を見つめながら唇を開く。


「そういえば、日宮とは……」

「壮介君?」


彼がどうかしたのか。

桜庭さんの言葉の続きを待ったけれど。


「いや。なんでもない」


何故か桜庭さんは、何か言いたそうに唇を開いた後、迷うようにしてから話を終わらせ、視線をコーヒーに落としたのだった。






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