溺愛オフィス
「それなら、その先に進んでみるか?」
提案の言葉を発した直後──
桜庭さんの手が、私の頬に伸びてきて。
温かな指先が、優しく触れる。
彼の澄んだ瞳は私を真っ直ぐに見つめていて、その距離が……
少しずつ縮まっていく。
鼓動が、ひどく高鳴って。
私は、呼吸をするのも忘れたかのように固まっていた。
もう、子供じゃない。
経験がなくたって、この先に何が待ってるかなんてわかる。
それに、相手は桜庭さん。
心に想う人だから、このまま受け入れたいと……そう、思うのに。
これは、なんのキスなのか。
心の片隅に浮かんだ疑問が、一気に私の中を駆け巡る。
試しだと言うなら。
そんな軽いものを受け入れて、私は後悔しない?