溺愛オフィス
いつも壮介君は数少ない同期の男性とランチに出ている。
どうやらその彼も今日は外に出ているようで、彼らが普段から利用しているお店に行くことになった。
リアライズの入ってるビルの三件隣のビルの地下。
そこに、壮介君がいつも行っているというダイニングバーはある。
お店は知っていたけど、入るのは初めての私。
どうやらエスニック料理がメインらしく、入店するとすぐに香辛料の香りが鼻をくすぐった。
店内はあまり広くはないようで、満席気味。
店員さんがやってきて、待ち時間が発生していることを説明してくれている最中──
「蓮井ちゃん、日宮!」
店内から声がかかって、私たちはそちらに視線をやる。
すると、スタイリッシュな店の奥、4人がけのテーブル席でこちらに向かって手を上げる深水さんの姿が。
「良かったら相席しよう」
そう提案してくれた深水さんに、壮介君が「ラッキー」と口にする。
確かに、ラッキーだよね。
待ち時間なしになったもの。
だけど、深水さんの向かい側に座っている人。
今は背を向けているけれど、完全にあの人な気がするんです。