溺愛オフィス


言葉に出来ず、口をパクパクさせていると、壮介君は小さく笑って。


「素直でしょ? 俺。誰かさんと違って」


皮肉交じりに言われてしまう。


そう、だね。

私、素直じゃない。

本当は、聞けばいいんだ。

試しだったのかって。

伝えればいいんだ。

自分の気持ちを、ありままに。

だけど、何かが壊れてしまうのではないかと思うと、足かせでもつけられたように動けなくなってしまう。


壮介君はもしかして、私の気持ちに気付いてるのかな?

……だとしても、彼に相談するなんてひどいことはできない。

その前に、ちゃんと壮介君に返事しないと……だよね。

壮介君に告白された時とは違って、私の気持ちは桜庭さんに向かってしまってるんだから。


今日、少し時間もらえるか聞いてみようかと考えた直後。


「まだ、内緒だけどさ」


壮介君が小声で話し始める。


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