溺愛オフィス
アルモ……私たちが働いていたショップで働くことになった理由が、私?
「……っていう、冗談でもなくて?」
「ないって。ホントだよ。柊奈さんは覚えてないかもしれないけど、俺、柊奈さんに接客されたことあるんだ」
彼の話によると、どうやら私がまだ新米の頃に壮介君は来店したらしい。
そこで、私が接客についたのだけど……
「すんごい新人オーラ出てて、最初は俺1人で決めるからいいよとか思ってたんだけどさ」
壮介君は思い出しているのか、クスクスと笑いながら語る。
「俺のこと考えて、一生懸命で。買って欲しくて適当なこと言う店員も多いから、嬉しかったっていうか……この人の選ぶ服なら買いたいって、思えたんだ」
「そうだったんだ……ありがとう。っていうか、覚えてなくてごめんね」
あの頃はお客様の顔を覚える余裕もまだなかったんだよね。
本当、ド新人だったなぁ、私。
「いいよ。俺、その後買いに行ってないし」
「えっ、そうなの?」
「うん。客になるより、一緒に働いてみたいって思ったから」
だから、その頃していたバイトがひと段落ついたところで、アルモに面接を申し込んだ。
壮介君はそう話すと、コーヒーを一口飲み込んで。
「働いて、柊奈さんがどんな人か知っていって。気付けば、なんか気になって」
壮介君の大きくて綺麗な瞳が、私を見つめる。
「好きになってた」
これでも結構片想い歴が長いんだと冗談めかして言われ、私はどう返していいのかわからず、曖昧に微笑み俯いてしまった。