溺愛オフィス
夕食を済ませ、桜庭さんの家にお邪魔すると、彼はソファーに腰掛けている私に冷たいアイスコーヒーを作ってくれた。
「ありがとうございます」
お礼を口にしながら受け取り一口飲んでからテーブルに置くと、桜庭さんは私の隣に腰を下ろす。
ソファーが僅かに揺れて、次いで、彼の指が私の髪に触れるのを感じた。
こうされるのは初めてじゃないけれど、照れくささはどうしても込み上げてきて。
それを隠すように、私は広告の話を持ち出した。
「あの広告、そろそろ外されますよね?」
「ああ。今月中までの契約だからな」
答えながらも、桜庭さんの手は私の髪をくるくると絡めとり弄んでいる。
「そしたら、少しはマスコミの探ろうとする動きも静かになりますね」
「どうだろうな。社長はもう一度お前を使うことも考えるみたいだけど」
「えっ!? それ、本当ですか?」
「本当だよ。でも、一応俺が断っておいた」
お前、やだろ?
確認されて、私は即座に頷く。
すると、ようやく桜庭さんの指が髪から離れ、自分用に淹れていたコーヒーカップを掴んだ。
そして、そのまま口に運ぶ。