溺愛オフィス
「我慢、してください」
顔を俯かせて抵抗を試みた。
けれど、そんなのは全くの無駄らしく、桜庭さんの右手が強引に私の顔を上向かせて。
「できない」
拒否の言葉を囁いた直後、整った顔が近づき、ふわりと優しく唇が重なって離れた。
続けて、もう一度同じように唇が合わせられて、離れて。
何度も繰り返される優しいキスの嵐に、私の心が甘く熔け始めた頃……
「まだ言ってなかったけど、俺にとってもお前は特別だよ」
桜庭さんが穏やかな声で気持ちを告げてくれた。
私の額にこつんと彼の額をくっつける。
「柊奈が変わろうとする姿に、俺も励まされてた」
クールな目元を緩く細めて。
「それと……ずっと、あいつのせいで女を信じきれなてないとこがあったけど、柊奈なら信じられると思えた」
あいつ、とは、KAORIさんのことだろう。
桜庭さんが始めて語ってくれた彼の心につかえていたもの。
教えてもらえたこと、信じてもらえていることが嬉しくて。