溺愛オフィス
もう一度、きちんと謝ってお礼も言いたかったな。
明日、タイミングを見て話しかけようと思いつつ、廊下にでる。
──と、オフィスの扉が開く音がして振り返ると、壮介君が出てきた。
「柊奈さん、この後暇?」
「帰るだけだけど……もしかして、何か急ぎの仕事?」
「違う違う。暇なら俺ももう終わるから、飯でもどうかなと思ってさ」
壮介君は人差し指で頬をかきながら、提案してくれる。
現在ファッションコーディネーターのアシスタントをしている壮介君とは、基本的に帰宅時間が被ることは少ない。
だから、一緒にご飯に行けるのも、少し前にあった歓迎会みたいな集まりがない限り、あまりないのだ。
壮介君はバイト時代からそこそこ付き合いもあったし、二人で食事くらいなら抵抗感はない。
でも、昨日遅かったから早く帰って体を休めたい気もして迷っていると。
「わー! 素敵なお誘いね。私も参加したいなー」
「美咲」
美咲も仕事が終わったのか、リアライズブランドのひとつ『Stay Girls』の新作バッグを肩にかけ、ニコニコしながら会話に合流する。