溺愛オフィス
エレベーターに乗り、一階のボタンを押すと、岬がクスクス笑う。
「素直じゃないよね、彼。慌てて柊奈を追い掛けてた癖に」
「そうなの?」
「うん。午前中、柊奈の様子おかしかったからでしょうね」
壮介君……気を使ってくれたんだ。
嬉しくて、自然と顔が綻ぶ。
にしても……
「美咲も気づいてたんだ」
「当たり前でしょ。何があったかは知らないけど、大丈夫?」
「うん……もう平気」
きちんとお礼と謝罪が出来てない心残りはあるけど、と心の中で付け足して、エレベーターを降りた。
広いエントランスから外に出ると、春の温かい夜風が通り抜けて、白いチュールスカートの裾を柔らかく揺らす。