溺愛オフィス
少しすると壮介君が合流し、私たちは駅前通りにあるバールへ移動した。
このバールは二階建てで枕木で囲まれたオープンテラスがあり、夏はリアライズの社員の利用頻度も高いお店。
今はまだ夜になると肌寒いから、今日は中のボックス席に座った。
壮介君はビール、美咲は白のサングリア、私はアペロールソーダをオーダー。
乾杯して、アンティパスト盛り合わせとスモークサーモンと野菜のマリネをつまみつつとりとめもない会話をしていると、美咲が思い出したように私たちを見た。
「そういえば、柊奈に話したプロジェクトの噂。あれ、新ブランドのものらしいよ?」
「そうなんだ。もしかして、その情報も彼から?」
壮介君の手前、社長秘書とは言わずに聞くと、美咲は可愛らしい笑みを浮かべて。
「うん。彼から」
小さく頷いた。
社長秘書の彼、真面目そうだもんなぁ。
美咲が可愛く聞くから、うっかり話してしまうんだろう。
そのうちみんなが知る事とはいえ、ちょっと心配になってしまう。