溺愛オフィス
「や、私は──」
「前向きに考えてるのは知ってるよ? でも、行動が伴わないと意味がないじゃない?」
……美咲が何の話をしているのかは十分理解している。
彼女の言いたいことも、よくわかる。
だけど……
どうしても、踏み出せないのだ。
気持ちは前に進もうとしているのに、いざとなると勇気が出ない。
恋をして、触れ合うことに。
「なんなら誰か紹介しようか?」
「い、いいよっ。無理に出会うのとか、あんまり好きじゃないし」
拒否すると、美咲は"ほら"という顔をする。
「じゃあ、自然に出会ってるならいいんだよね?」
「まあ……」
「なら、うちの会社のメンズなんてどう? イケメン結構いるじゃない。社長の弟とか、新人君もイケてるよね」
あ、私はその辺りは好みじゃないし、手を出さないから安心してね。
なんて付け加える美咲に、私は苦笑いを浮かべた。