溺愛オフィス
【きっと夕陽のせいです】
桜庭さんから渡された資料に書かれていたのは、新ブランド発表に際し、トップモデルを起用し宣伝するというものだった。
私の隣に座り、資料を読んでいた壮介君が顔を上げる。
「どうして俺たちなんですか?」
そうだ、私はプレスとしてまだ新人だし、壮介君だって入社して間もない。
「だからこそ、なんだよ。"CaN Do"のテーマは挑戦。いろはを知り尽くした人間よりも、まだ染まってない人間の方がテーマに合っていていいと社長と俺は判断した」
「でも、それなら他にも……」
いるのではないか。
続けるはずだった私の声は、桜庭さんによって遮られる。
「日宮は学生時代に読者モデルをやっていたよな」
「まあ、少し」
「その頃から日宮のセンスは光るものがあった。それは、うちの販売員になってからもすば抜けてる」