溺愛オフィス

【2人だけの飲み会です】



朝のオフィスビル街を歩きながら、私は欠伸を噛み殺す。

昨夜は寝る前に読んでいる本に夢中になり過ぎて、うっかり夜更かしをしてしまった。

仕事中はぼんやりしないように気を付けないとと肝に銘じながら、リアライズの入っているビルに向かっていると。


「柊奈ー。見たよー?」


背後から背を軽く叩かれ振り向くと、白いシャツにボーダー柄のガウチョパンツを爽やかに着こなした美咲がいた。

私が「おはよう、美咲」と挨拶すると、彼女は挨拶を返してから「そんなことより」と顔をにやつかせる



「昨日は桜庭さんといい感じに見えましたが?」


フフフと笑う美咲だけど、私は何の話か見えず、左隣を歩く彼女に「え?」と返した。

すると。


「打ち合わせ帰りのアクシデントのこと」


ズバリ、昨日の出来事を口にされて。


「みっ、見てたの?」

「ショップに向う時にたまたまねー」


< 58 / 323 >

この作品をシェア

pagetop