溺愛オフィス
美咲は営業部に所属している。
営業部の仕事内容は幅広いけれど、簡単に言えば、本社とショップ間の調整役を担う部署だ。
本社からの意向をショップに伝えたり、各ショップの商品動向やスタッフの意見等をフィードバックしたり。
その為、美咲は時々ショップへ訪れ、販売スタッフへのケアをしている。
多分、昨日もそんな用事でショップに向かっていたんだろう。
そして、目撃されてしまったのだ。
「桜庭さんに支えてもらって、どうだった? なんか芽生えた?」
「芽生えてません」
「つまらないのー。桜庭さんかっこいいし、試しに付き合ってみればいいのに」
試し、だなんて簡単に言ってのける美咲。
そりゃ、美咲みたいに完璧な容姿と豊富な恋愛経験があれば、そんな思考にもなるんだろうけど、平凡な容姿と、お子様なお付き合いしかしてこなかった私には…
「桜庭さん相手にお試しだなんて、ハードル高過ぎだよ」
ありえない。
そう思っての発言だったのに、何故か美咲は瞳をキラキラさせて私を見ている。