溺愛オフィス
「んーーっ!」
本日、最後となる衣装貸し出しの対応が終わり、私はプレスルームで大きく伸びをした。
窓ガラスの向こうには夜景が広がっている。
腕時計を見れば、時刻は八時を少し過ぎていた。
「よっし、片付けちゃいますか」
まず、手近にある広げられたトップスをたたみ直そうと手に取る。
立ったまま服をたたむのはもう慣れたもので、今では座ってたたむ方が時間がかかるほどだ。
そういえば、ショップで働き始めた頃、店長に「お客様が広げた商品は、暫くたたみ直さないこと」と教えられたっけ。
これは、お客様がゆっくり気を使わずに商品を選べるようにという配慮なんだけど、新人の頃は早く仕事に慣れようと必至になり過ぎて、お客様がどう思うかまで考えられてなかった。
当時の事を懐かしく思いながら、たたみ終えたトップスを置いた時、プレスルームの扉が開く。
ひょこっと顔を覗かせたのは、壮介君だ。
「いたいた。今平気?」
「うん。どうしたの?」
「や、もしこの後仕事ないなら、よろしく会でもどうかと思ってさ」