溺愛オフィス


水曜の居酒屋は週末に比べて比較的空いている。


「柊奈さん、生お代わりヨロシクー」

「はいはい」


少人数用の個室で、壮介君に催促された私は、店員さんを呼ぶボタンを押した。

壮介君は人使いが荒い。

これは、私が相手じゃなくても変わらなくて、バイト時代から仲間内ではこんな感じだ。

でも、目上の人にしてるとこは見たことがないから、そこはちゃんとわきまえてるらしい。


「にしても桜庭さん、こんな時くらい仕事切り上げて参加してくれてもいいのにさ」

「仕方ないよ。切り上げられない仕事なんだろうし」


結局、桜庭さんは仕事が立て込んでいるらしく、このよろしく会には不参加となった。


「また別の日に改めてすればいいよ」


なだめながら、ふっくらしたチーズオムレツをカットして小皿に取り分け、壮介君に渡す。

それを受け取ると、壮介君は「そういえばさ」と声を発した。


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