溺愛オフィス


「プロジェクトの話をもらった時に、桜庭さんが言ってた"車の中でした話"って何?」


問われたのと店員さんが注文をとりに来たのは同時。

私は生ビールの追加を頼んでから、チーズオムレツを頬張る壮介君に視線を戻す。


「多分、ショップで働くことになったきっかけとか、そんな話のことだと思う」

「ふーん……」


興味なさげに返事をして、今度は枝豆に手を伸ばした壮介君。

あれですか。

聞いてみたけど、たいして面白くなさそうだからいいかー的な。

壮介君のことだからあり得るかもと思ったところで、逆に気になったことを聞いてみる。


「壮介君は? どうしてArmoire(アルモワール)でバイトしようと思ったの?」


アパレルショップで働く子たちは、オシャレが好きで探してたらたまたま見つけたとか、そんなのが多い。

ただ、華やかに見えても実は意外と地味で体力がいる仕事だったりするから、合わない子はすぐに辞めてしまうんだけど。


ちなみに、Armoireとは私たちが働いていたショップの名前。

フランス語でクローゼットという意味らしい。

店員やお客様はよく「アルモ」と略して呼んでいる。


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