溺愛オフィス


追加したビールが笑顔の可愛らしい女性店員さんによって運ばれ、壮介君の前に置かれた。

壮介君はそれを手に取ると。


「……柊奈さんがいたから」


なぜか、私の名前を零した。


「えっ?」


意味がわからず瞬きを繰り返していると、壮介君はニヤリと口の端を上げて。


「てゆーのは冗談で、まあなんとなくだよ」


いやいや、冗談も何もよくわからなんですけど。


「それより、桜庭さんの車に乗ったんだ?」


いきなり話題を変えられて一瞬戸惑うも、私は頷く。


「うん。終電ギリギリになっちゃって送ってもらったの」

「送ってもらった、ね」


私の言葉を繰り返した壮介君は、ビールを一気に飲み干すと、ちょっと乱暴にグラスをテーブルに置いた。



< 66 / 323 >

この作品をシェア

pagetop