溺愛オフィス


「……支倉(はせくら)。手短にしてくれ」

「はいはーい」


……はせ、くら?

今、桜庭さんは"はせくら"と口にしたよね?

それに対して、KAORIさんも普通に応えていた。


これは、どういうことだろう。


私は、前を歩く壮介君の背中をなんとなく眺めながら考え歩く。

そして、エレベーターに乗る際に、ふと思い出した。


KAORIさんが桜庭さんに送っていた視線と表情を。


もしかして、二人は元からの知り合い……なんだろうか?

気になって、本当はすぐにでも壮介君に聞いてみたかった。

でも、あまり人のプライベートなことを詮索するのは良くない気がして。

私は結局、桜庭さんと合流してからも、何も確かめられないままリアライズに戻り、普段通りに仕事をしてから帰宅したのだった。



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