溺愛オフィス
──翌日。
「蓮井、スタッフの件は?」
「それが、ヘアメイクとカメラマンについては、やっぱりKAORIさん側でこだわりたいそうです」
「はー、さっすがトップモデル」
私は、桜庭さんと壮介君の3人で会議室に集まり、撮影についてのミーティングをしていた。
「手配はKAORIサイドで?」
桜庭さんに尋ねられ、私は首を縦に振る。
「事務所の方からアポを取ると言ってました」
「わかった。じゃあ、次は──」
続いて桜庭さんは、スケジュール表に視線を落とし、壮介君に進捗状況を確認。
と、その時。
「……悪い。少し待っててくれ」
桜庭さんは立ち上がると、ズボンのポケットから携帯を取り出して誰かからの着信に出た。
そして、私と壮介君を会議室に残し、扉の向こうへと姿を消す。
その光景に。
「……あ」
私は思い出し、声を漏らした。
どうしてKAORIさんの本名にひっかかりを覚えていたのか。