溺愛オフィス


「結婚できるかもわからないし、いつか自分が変われる日が来たら、どうしたいかハッキリするかもしれませんね」


曖昧に笑んで答えると、桜庭さんは少し考える素振りを見せて。


「それは、男が苦手だからってのに繋がるのか?」


ズバリ当てられて、私は「……そうですね」と苦笑した。

桜庭さんから貰ったコーヒーのプルタブを引いて、一口飲む。

ミルクの柔らかい甘さが合わさったその味を堪能してから、私は再び桜庭さんに視線を向けた。


「桜庭さんは、ずっとここで?」


なんと言っても桜庭さんは社長の弟だ。

これからも社長と一緒にリアライズを盛り立てていくのだろうと当然の如く思っていたら。


桜庭さんは、首を横に振った。


「ここにいるつもりはない」

「えっ、そうなんですか?」

「親や兄貴の敷いたレールに乗るより、ライバルになる方が面白いだろ?」


そう答えた桜庭さんは、何だか少し楽しそう。

そのうち自分の力で会社を作るつもりで、海外進出も視野にいれていると教えてくれた。


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