溺愛オフィス


「じゃあ、とってくればいいと思うけど……」

「めんどくさい」


そう言って、壮介君はコーヒーを一口すする。

そんな彼を呆れながら見ていたら、美咲が小さく笑った。


「ずっとこんな感じだったの?」


問われて、私は苦笑しながら頷いた。


実は、私が彼と初めて会ったのは、先月、彼が入社した時ではない。

バイト時代、美咲が他店に移動して、変わるように入ったのが、壮介君だ。

私が本社勤務になるまでの一年間、同じショップで働いていたんだけど……

お客様からモテるモテる。

この容姿の上、普段の話し方よりも何倍も愛想良く接客するもんだから、壮介君目当てで来店するお客様もいたくらいだ。

当時のショップの店長は、壮介君は小悪魔店員ね、なんて言ってたけど、私には悪魔に見えていたり。

だって──


「あれ? 柊奈さん、なんか太った? やっぱ独り身が長いと油断するんだなー」


私に対して容赦がないから!

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