溺愛オフィス


「断る。見ての通り仕事中なんだよ」


桜庭さんはKAORIさんの誘いをバッサリと切り捨てる。


「いいじゃない、少しくらい」


それでも引き下がらないKAORIさん。

やっぱり……この二人は恋人なんだろか。

親しい雰囲気だし。

ただ、あまり穏やかではないやり取りに、二人の恋人としてのあり方は、いつもこんな感じなのかと他人事ながら冷や冷やしていたら。


「元、恋人のよしみで付き合ってよ、一陽」


KAORIさんが、甘えるように言った。


……元、恋人。

今ではなかったけれど、どちらにせよトップモデル本人から出た言葉に私は


夜のオフィスで


目を丸くしながら、二人を交互に見ていた。















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