溺愛オフィス


「もうっ、またからかうんですか?」


言葉だけでなく、あの時と似た意地悪そうな微笑みに私は抗議する。

すると、桜庭さんは小さく笑って。


「半々だな。お前がその気なら協力してやるよ」

「その気って……」

「ほら、手」


戸惑う私をよそに、桜庭さんは自分の手を軽く揺らして催促する。


正直に言えば、拒否することは出来た。

いい加減にしてくださいって、渡すものだけ渡して立ち上がればいいんだと、頭では考えていた。

だけど……


手を差し出してくれる桜庭さんの瞳が、どことなく優しくて。


私は、何かに導かれるように


桜庭さんの手に


自分の手を重ねた。



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