溺愛オフィス


桜庭さんの手が、包み込むように優しく私の手を握る。


さっき触れた時よりも感じる確かな体温。


ドキドキするけど、やっぱり嫌じゃなくて。


それでも心に湧き上がる、逃げ出したいような、でもこままでいたいような気持ちに困惑していたら。


──コンコン。


応接室の扉を誰かが叩く音がした。

そしてすぐにその扉は開き……


「ひーなさー…ん……」


現れたのは壮介君で。

彼の視線が、私と桜庭さんを繋ぐ手を見て……停止した。


私はあたふたしながら桜庭さんから手を離すと、急いで立ち上がる。

けれど、混乱した頭では、そこからどうしていいのか判断がつかなくて。


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