LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―

「あなたが……伊呂波、煥……?」



夕暮れどきを川沿いで過ごすのが好きだ。


五月に入って、気候も温かくなった。



柔らかい草の上に引っくり返る。


空は半分、オレンジ色。


東のほうは冷めた色をしてて、白い半欠けの月が引っ掛かってる。



「上弦の月、waxing moonか」



オレは、つぶやいてみる。


体の内側と右耳から、自分の声が聞こえた。


左耳はイヤフォンを着けてる。



イヤフォンが流す轟音には、まだ詞がない。


そろそろ詞をつけなきゃいけないんだが。



「こんなんじゃ陳腐、だよな」



思い付かない。


オレの日常はひどく乾いてて、刺激がないわけじゃないけど、下らない。


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