LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―
「煥のマシンのほうがパワーあるだろ」
下弦の月が昇った。月に一度の特別な夜だ。
革のライダースジャケット、手袋、ブーツ。色はすべて、メットも含めて、黒。
同じ格好の兄貴と二人、ガレージへ降りる。
マンションの半地下の片隅で、眠ったような愛車たちのソフトカバーを外す。
大型バイクが姿を現す。
オレのは外車で、黒いベースにシルバー。
兄貴のは日本車で、ボルドーに黒がアクセント。
ふと、足音がガレージに反響した。
師央が、明かりを背にして立っている。
「どこに行くんですか?」
細い声が少し震えていた。
兄貴が笑顔をつくった。
「起きてたのか、師央?」