LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―
母が、食卓に皿を並べる手を止めた。
「海牙さん、襄陽に移ってきたんだ。大都は給料がいいって言ってたのに」
「阿里先生と知り合い?」
「高校時代からのお友達よ。やっぱり大都は肌に合わなかったのね」
「自分の時間が持てなかったんだって」
大都高校は実績主義すぎる、理論物理学の研究が進まなくて困った、と言っていた。
教師でありながら、独自の解析プログラムを使って理論物理学の論文を発表する阿里海牙は、学界でも特異な存在として注目を集めている。
「海牙さんを引き抜いたのは、理事長でしょ?」
「うん。それこそ、友達らしいね」
母はなつかしそうに微笑んだ。
鼻歌交じりで食卓を整えていく。
三人ぶんの皿と箸が並ぶ。
「今日、おとうさんの帰り、早いんだ?」
「さっき現場を出たんだって。久しぶりに三人で食べられるわね」