LONELY GUARDIAN―守り人は孤独と愛を歌う―
今、父は初めての大役に抜擢されている。
歴史映画の主役だ。
原作は気鋭の若手小説家の出世作で、籠城する守将の苦悩を描く物語だが、表舞台に立つのは柄じゃないと、父はさんざん渋ってきた。
最初のオファーから丸二年。
説得され続けた父は、ついに折れた。
KHANという映画会社が制作元だ。
師央も一度だけ、現場に見学に行かせてもらった。
敵役の俳優がたまたま暇で、案内してくれた。
父へのライバル心がある、と言ってはいた。
でも、案外いい人たちだった。確か、正木さんと世良さんだった。
ふと、表からバイクの音が聞こえた。
このマフラー音は、間違いない。
父が昔から大切に乗っているマシンだ。