ハル
それを見たソウが、よし、と口を開いた。首を傾げるハルに、ソウがある条件を持ちかける。それを聞いたハルはぱっと顔を輝かせ、着替えのためにその場からいなくなる。
上手くハルを着替えさせることに成功したソウは、苦笑を零しながら台所へと立った。今日の朝食はホットサンドだ。身体は小さいが、ハルは成長期真っ只中にある。故に、ご飯はよく食べるのだ。
ハルに持ちかけた内容とは、ソウが朝ご飯を作り終えるまでに着替えられたら一緒に遊ぶというもの。一瞬アオが出てきたのは見間違いではないだろう。
ハルが先に終わるのは目に見えていたけれど、ソウはハル自身にやらせることが大事だと考えている。加えてこの雪ではやる仕事も出来ない、たまには一緒に遊ぶ時間も必要だ。ハルは、愛されるべき存在だから。
ハルと暮らしはじめて初めての冬。当然雪も初めてなわけであり、ハルのはしゃぎ方は少々新鮮である。しかし、楽しそうなハルに笑みが零れるのをソウは抑えきれない。
手際よくサラダを用意する。トースターにサンドを入れていると、「ソウ!」と自分を呼ぶ声がした。
「きがえたよ、ソウ! さむいからあったかくした!」
「おー、偉い偉い。俺の負けだ、じゃあ一緒に遊んでやるからご飯食え」
丁度いいタイミングでチン、とトースターが小気味いい音を立てる。テーブルに出来上がったホットサンドとサラダを置くと、アオとソウは向かい合って座る。
「いただきます!」
「どうぞ召し上がれ」
言うや否や、すぐに食べ始めるアオ。優しい表情でそれを見ていたソウもホットサンドを手に取る。朝あまり食べる方ではないソウは、アオより一つ分少ない。
暫くして同時に食べ終えた二人は、片付けをしてから、アオが外へ飛び出すのをソウが追うような形で外へと繰り出した。
「ゆき! わーソウ、ゆきだぁ!」
「あーはいはい、雪だな。アオ、ちょっと来い」
雪を丸めながらとことこと寄ってくるアオの手を握る。素手でやっていたせいか、凍ってしまうんじゃないかってほどに冷たい。
疑問符を浮かべるアオに、ソウは上着のポケットから子供用の手袋を取り出すと「これはめろ」とそれを手渡す。アオはうん! と頷くと、すぐに手袋をして雪の中へと繰り出す。