ハル
自分のお陰だとは思わない。勿論少しはあるかもしれないけれど、それだけではない。
だが、そんなものはどうだっていいのだ。何だっていい、今、あの子が楽しんでいるなら、と。ハルを、アオを拾った者として、ソウは考える。
「ソウ、ソウ! これでいいー?」
「おーアオ、頑張ったな。そっち行くから待ってろ」
ころころと、大きくなった雪玉を転がしていく。アオの小さな手が、それを手伝う。ソウの作った雪玉の上に、アオの作った小さい雪玉が乗せられた。
「わーい、できたできたー!」
その、あまりにも嬉しそうなアオに破顔し、ソウはその頭に手を乗せる。その手を横に動かして撫でると、飛び込んできたアオを受け止める。
「ソウー……」
「……どうした、ハル」
そのままの体勢で、ソウを呼ぶハル。急に出てきたハルに、ソウは何事かと訊き返す。ぎゅっと抱きついてきたハルを、更に抱き締める。
「ソウ……」
「ハル、どうしたハル」
しがみついてくるハルを、覗き込もうとした。だが、ハルがしがみついているためにそれは叶わない。
ぽんぽんと頭を叩く。それでも力は弱まらない。ハル、ともう一度呼びかける。ぴくり、とハルが反応する。
「……ソウ、」
切なげな、儚い声に。ソウの胸はつきんと痛む。
白銀のセカイ。そこに留まる、ソウとハル。他に誰もいないセカイはとても静かで、沈黙が心を突き刺す。
「……こわいんだ、ソウ。僕、こわいの」
「ハル……」
「いつか、この幸せが崩れちゃうんじゃないか、って」
ハルの言葉に、ソウは何も言えなくなる。黙り込むソウに、ハルは言葉を紡いでいく。
「……大丈夫だ、ハル」
大丈夫、大丈夫だから、ハル。揺れるハルの声に、ソウは拘束を強める。強く強く、大丈夫だよというように、俺がいるからというように。
だって決めたから、と。ハルを守ると決めたから、と。